第17話 病気になってから気づいたこと

糖尿病になって気づいた事、それは私はインスリンを打たなければ生きていけない1型糖尿病だ。

社会復帰して一番思ったのは健康な人とのギャップで、人はいかに他人に対し無関心と言う事を思い知らされた。

そうして、そのギャップに私は苦しんで行くことになる。

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人と違うこと

インスリン注射を打つということ

人と違うこと、私はインスリン注射を食事毎に打たなければ生きていけない。

3回食事をすれば3回分の注射を打たねばならない。

こう書くと3回注射を打つだけでいいんでしょ!と思うかもしれないが、いくら注射針が極細になっているとは言え、注射針を刺す瞬間はそれなりに痛いし、打ち所が悪いとかなり痛い。

注射針を刺す度に「俺って糖尿病なんだ」と認識して心が猛烈に寂しくなる。

これの繰り返し。

俺ってこのインスリン注射という人工物がないと生きていけないのだと思うとさらに悲しくなる。

まずここが健康な人と違うところだ。

そして一番困るのは、外出先での注射を打つ場所。

これは本当に困る。

入院中は周りも周知の事実だし、恥ずかしくなかったので、カーテンを開けた状態でも平気でインスリン注射を打っていた。

しかし、退院後はそうは行かない。

周りの人(職場)は私が糖尿病だと認識があっても、インスリン注射を打っている認識がない。

退院し、職場に復帰した直後は「注射を打っているんでしょう?痛くない?」とか興味本位で聞いて来たが、そんなことはすっかり忘れている。

なので職場でインスリン注射を打つことは困難だ。

想像してみて欲しい。

▲これが実際の注射器(使い捨て型:ヒューマログ)

いきなり職場でズボンのベルトを外し、ワイシャツをめくり上げ、お腹を出して注射を打ち始める光景を見たらみんなビックリするだろう。

そんなことは職場では出来ないので、人目につかないところでひっそりと打つことになる。

それは人目につかないところ・・・それはどこかと言えばトイレだ。

誰も見えない個室で隠れて注射を打っている姿は情けないと言うかみじめだ。

男子用トイレは大体、汚く使われる。

隣の個室でブビビビイ~汚い音が響く中、私は注射を打ちながら「臭せえぞ!何で俺はこんなところで注射を打たなければならないんだ!!」と思い、トイレに行くとみじめな思いになった。

アルコールが飲めない

糖尿病になるまではあれだけ飲めていたお酒も病気になってから一切飲めなくなった。

正確には言うと怖くて、お酒を飲めないというのが正直なところだ。

なぜ、飲めないかと言えば単純に主治医からも飲むなと止められていたし、そもそも飲んだところで低血糖を起こすし、酔っていると低血糖に気付かないから更に危険と教えられていた。

退院してからはずっとお酒を飲むことも避けていたし、飲み会に行くことも臆病になっていた。

なぜなら、その当時の私は不幸な自分に向き合えていなかったから。

それでも、以前のお酒をよく飲む私を知っている職場の同僚は、私の病気を知ってか、そんなことも忘れているのか「今日飲み会だけど行かない?」その度に「俺、糖尿病だから酒飲めないって知ってるだろ!!」と断るのに苦労した。

中には、悪意のある誘いもあった。

これは私に原因があるが、病気になる前の私は周囲の人に攻撃的に接していた。

なぜ攻撃的な態度だったかと言えば、それは私の学歴コンプレックスによるものだ。

高校生の時にバイクを乗り回し、夜な夜な遊び回っていた私は、結局大学に行けなかった。

完全なワルではなかったが、ちょいワルだった。

出向先の社員は大学卒しかいない。

高専卒もいないわけではないが、そもそも高専卒だと設計やSE的な業務に就くことはほぼ不可能。

そんな訳で周りは大卒の意識高い系の人間ばかりだったので、私の唯一のアイデンティティである、ちょいワルを総動員して対抗するしかなかった。(今考えると本当にくだらない人間だった)

具体的には、気に入らない奴には挑発する、悪態をつく、脅す、喧嘩を売るとやりたい放題だった。

何もない奴が虚勢を張るにはこれしかなかった。

そんな状態だったから、私が病気になって弱っているのを良いことにわざと誘ってくる奴までいた。

どんな奴かというと私と昔から反りの合わない同僚だったり、以前私が会社の経費で上司を抱え込んで上司のご機嫌を取っていたのを良く思っていない人達だった。

例えば同僚の女の子と一緒に飲み会に誘ってきて、行けないことを説明すると、「あいつ終わってんなー」と言いながらみんなでひそひそ話を去っていく。

聞こえてるんだボケ!!と心の中で思ったが病気になると気も弱くなってくるものだ。

以前の私だったら胸ぐらをつかんで一発かます所だが、その時は気弱になっているし「仕方ないなー」と思い残業をするか帰るかしていた。

私には完全に味方などいなかった。

なんだか自分の居場所がなく、何かすごく窮屈に感じた。

こんなことを繰り返すうちに私の心はすさんでいく・・・

そしてだんだん人間不信に陥っていく。

こうなると完全に負のスパイラルだ。

食事の後は運動をしなければならない

飲み会に行けなくなったので、食事の誘いくらいは、少しずつ行くことにした。

ここでも健康な人とのギャップを感じることになる。

通常の健康な人ならば食事の後は何もしなくて良い。

私たち糖尿病はインスリンを打っていても(特に1997年当時にインスリンは・・・)食後に運動をしないと血糖値がグングン上がってくる。

どのくらい上がるかと言えば、何もしなければ血糖値は200~300m/dlになってしまう。

会社近くで食事をし、何もしないで通気電車に列車に乗れば高血糖な状態が通勤時間分続くという事だ。私の場合は電車に乗っている時間は1時間20分くらい。

その時間放置しておくことは良くないので、会社近くで食事をした場合は必ず、1駅または2駅分は歩くことになった。

だからみんなで食事をした後は「みんなお疲れ、明日もよろしくねー」と別れたあと夜の街を一人で歩く。

夜の東京タワーを眺めながら、みんな楽しそうに駅に向かって帰る中、私だけ一人、黙々と歩いた。

晴れていようが、雨が降っていようが、暑かろうが、寒かろうが・・・関係ない。

怒り、悲しみ、強烈な疎外感が私の心を襲っていた。

なんで俺だけこうなってんだ!!!!(# ゚Д゚)?と一人で怒りながら・・・

その時の私は完全にマイナス思考になっていた。

そして歩きながら、ふと思った。

ヨシ!転職してやる!!

【つづく】

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