第11話 入院中期

低血糖はツライ。

健康な人には低血糖中の苦しさなど、想像もつかないと思うが、低血糖になると冷汗が出て心臓がドキドキして、それがもっと進むと指先がプルプル震えてくるのだ。

私の場合は、血糖値が90mg/dlを下回ると不快感が伴い感知できるようになった。

入院中期の訓練は、社会復帰に向け低血糖を適正に管理できることが重要となる。

低血糖を放置していては生命の危機になるし、低血糖のことを理解している人ばかりとは限らないのでもし、自分が低血症による昏睡にでも陥ったら完全にアウトだ。

待っているのは死だけである。

そう考えると、扱いを間違えるとインスリン注射は常に死と直結する問題なので扱いについては自己判断ではできないのだ。

■低血糖症

症状
低血糖症の症状には交感神経症状と中枢神経症状の2種類が知られている。交感神経症状は低血糖時に分泌されるカテコールアミン等による症状で、発汗、動悸、手の震えなどの症状である。中枢神経症状はブドウ糖欠乏による中枢神経のエネルギー不足を反映した症状である。血糖値が50mg/dl以下になると頭痛、眠気、脱力、集中力低下などの症状が出現する。血糖値が30mg/dl以下になると痙攣、昏睡になり、対応が遅れると意識が戻らないこともある。交感神経刺激症状が出現する血糖閾値は中枢神経症状の閾値に比べて高いため、中枢神経症状症状出現前に交感神経刺激症状を認めるのが一般的である。しかし高齢者や自律神経障害のある患者、低血糖を繰り返している場合や乳幼児では交感神経症状が出ないでいきなり昏睡に至ることがある。これを無自覚低血糖という。また糖尿病治療薬のひとつであるSU薬は作用時間が長く、低血糖を起こしやすいので注意が必要である。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』低血糖症

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低血糖症は人によってまちまち

低血糖症を感じることが出来ずに街中を歩くことは即、昏睡に陥るリスクを伴う。

病院にいる間であれば、看護婦さんが適切に対処してくれるので安心だ。

この感覚は人によって様々で感度の良い人もいれば、感度が悪く気付かない人もいる。

特に高齢者は感覚が鈍っているので、低血糖に気付きにくい人も多いのだ。

では、低血糖になると何がいけないのか、不快感を感じているうちは良いが、血糖値が低下し、人によっては気づかないうちに昏睡状態に陥り危険な状態になる。

昏睡になるまで血糖値を放っておいたと言うことはダメージが伴う。

最悪、昏睡のまま意識が戻らないと言う事だってあるのだ。

脳内に糖分が行きわたらなくなると私の感覚では、頭がボーっとして来て言われもない恐怖が襲ってくる感じだ。

さらに血糖が低下してくると水の中から地上に魚が打ち上げられ、酸素を取り込むことが出来なくなって魚が口をパクパクするような得も入れない苦しさになってくる。

幸い私は昏睡を経験するまで放置したことはない。

低血糖時の対処について

低血糖になったら、体内から糖分を融通することが出来ない1型糖尿病患者(2型糖尿病患者も低血糖症をおこす人はいる)は外部から糖分を補給するしかない。

教科書的に正攻法で医者が教えるのはブドウ糖だ。

砂糖は非常時には吸収が遅くてダメだ。

ブドウ糖は吸収の良いように精製されており、脳にもすぐ効いてくる。

ただし、私の感覚ではブドウ糖も顆粒でまだ利きが遅いと思う。

一番早いと思われるのは液体でジュースの類、特にコーラが良い。

コーラも今はダイエットコーラなど人工甘味料を使っているので注意しないと全く利かないものもあるが、ここで言っているのはコカコーラ社の「赤コーラ」だ。

なぜコーラが良いかというと低血糖時は血糖がどんどん下がっているので、ブドウ糖を大量に飲む必要がある。

非常時には顆粒はなかなか飲み込みにくいし、第一、顆粒のブドウ糖を何袋も飲む羽目になるので苦しく、喉に引っ掛かりむせる時だってある。

なので私はあまりブドウ糖は使わない。

赤コーラであればペットボトル1本か350mlの缶を1本補充すれば確実に血糖は正常値に復帰する。

しかも街中でいきなり低血糖になったときにブドウ糖の分包を破ってバリバリ飲む人って普通の人から見たら何事が起ったかと不審に思うと思う。

100%挙動不審の人です!!ましてや職場でなんて絶対無理!無理ゲーです!!

糖尿病のことを職場にオープンにしていたとしても、周囲は理解できないだろう。

スマートに誰にも知られず血糖値を上げるなら私は赤コーラが最強だと思う。

コカコーラの販売機なら全国どこに行ってもあるし安心だ。

そういう意味でコカコーラ社は糖尿病患者にとって非常にありがたい存在だと思う。

世の中健康ブームで炭酸飲料全般、ましてやコーラなどを飲む人は少なくなった。

他社のコーラやサイダーなど色々試してみたが、やはりガツンと聞くのは赤コーラが最強です!!

コカコーラ社の方がこのホームページを見ていてくれたら、糖尿病患者のために是非、赤コーラをなくさないで欲しいと思ってます。

 意外なところで需要がまだまだあると思いますよ。本当に。

入院中期にやること

話が脱線してしまったが、糖尿病の治療においてやることはほとんどない。

前回の第10話で解説したが、流れ的には①〜⑤を毎食やるだけだ。

①食事前の血糖値の測定

②食前にインスリンを打つ

③食事を食べる

④運動(徒歩)

⑤食後2時間後の血糖値の測定(この時点で血糖値が高ければ追加でインスリンを打つ)

現在は、インスリンも改良が進んで②の食前にインスリンを打つことも無くなった。

食前にインスリンを打っていたのは、当時のインスリンが食後からでは作用するのが遅く、食べてからでは高血糖の時間が出来てしまうからだ。

現在は超即効性のインスリンが開発された事により管理が楽になっている。

また④の運動は入院時はそれしかやる事がないので良いのだが、実生活では大きな支障になる。

毎食後に運動なんて引退したご老人ならいざ知らず、現代の忙しいサラリーマンなんて絶対にムリだ。

毎食後の運動で疲れ切ってしまい仕事どころではなくなる。

いずれにしても社会復帰に向けた貴重なデータ採りの場なので私も手を抜かないで真面目にやっていた。

振り返ってみたらこの時の経験があって自分の病気と向き合う事が出来たし、良い時間だったと思っている。

2型糖尿病の人(インスリンは出ているが効いていない人やインスリン抵抗性)などは通院だけで、こういった指導もされないので管理がルーズになりがち、なので全ての糖尿病患者は教育を受けるべきだと思う。

教育を受けずに通院だけで管理しようとするのは免許取った日に首都高速にのせるようなものだ。

一度入院して徹底的に自分の病気と向き合ってデータ撮りをしたほうが良い。

この基礎データが頭にあれば後はアドリブで調整が効くのだ。

最初は低血糖の繰り返し

最初は私もそうだったが、食べる、歩くの繰り返しで低血糖を連発していた。

今でもそうだが低血糖は何度なっても慣れることなんかなく不快指数100%だ。

1型糖尿病はインスリンを打って低血糖が起ると危険だから、血糖を測る測定器とチップに健康保険が適用される。(2型糖尿病には適用されないので測定したければ自費となる)

世間の評価はそれだけ危険と認識されているとの裏返しになる。

実は入院時においては低血糖を起こすことは悪いことではなく、低血糖が起きたらインスリンの打つ量が多過ぎる話であって打つ量を減らせば良い。

その判断を下すのは医師だ。自分でしてはいけない。

そのためにほぼ同じ距離を毎日同じルートを歩いてデータ採りをしないといけない。

医師もきちんとしたデータが整っていないと正確な判断が出来ないからだ。

入院中期はこれの繰り返しで過ぎていった。

お見舞いで感じたこと

最初はお見舞いなんて来てもらっても困るが、ようやく自分の心の整理もつき、やることも分かってきたので少し余裕が出てきた。

毎日ブラブラしているので暇になって来た。

最初は断っていたお見舞いもそろそろ来てくれるならどうぞという感じだ。

断っていたお見舞いも、どうぞといった瞬間に次々とやってくる。

親戚、友達、職場の同僚、先輩と多いときは1日4回違う人がやって来た。

来てくれるのはありがたいのだが、こちらとしても毎回人が変わるたびに病気の解説と今やっている治療について説明するのは疲れた。

その中で気づいたことがある。

 ・健康な人は病気に対して何の知識もない。

 ・糖尿病になると失明や壊死が進んで足が切断されるなど誤った知識

 ・インスリン自己注射は肩に打つものだと思っている

 ・病気は根性で治るものだと思っている(気の持ちよう)

みんな心配していると思ったら、興味本位だったり人の不幸を楽しんでいるように感じられる人も中にはいた。

こういう時に人間の心理というのは良くわかるというものだ。

今、自分は不幸の絶頂にいると思い込んでいた当時の自分も悪かったと思うが、このように病気は人の気持ちを弱気にさせるものだ。

何の気なしに言った言葉でも気になってしまうし、その一言で恨んだりもする。

両親は別としても入院当日の面会時間でもない深夜、強引に見舞いに来たk君は、さすがに信用できる男だと思った。

このお見舞いを契機に疎遠になっていった人も多くいる。

やはり、自分が一番困っていた時に手を差し伸べた人とそうでない人では違う。

私が病気になるまで一生懸命に結婚式の幹事をしていた2組は退院後、結婚式には参加したがお互い気まずくなってしまい残念ながら疎遠になってしまった。

ちなみに今もk君は一生の友達としてお付き合いをしている。

そして天使が舞い降りた

今は、スマホが一台あれば一日退屈しないが1997年当時はまだ娯楽の王様はテレビであり、この時代にはSNSやYouTubeはまだまだ存在しない。

病院のテレビも有料でカードを購入しなければいけないし、昼間のテレビはつまらない。

連日のお見舞いで、みんな雑誌やコミック誌を大量に買ってきてくれた。

なので、私のベッド脇には大量の雑誌が山積み。

全部目を通すのに苦戦しながら雑誌を見ていると、私のベッドのカーテンを開け看護婦さんが入って来た。

視線は雑誌を読んでいたので外さずそのままだった。

どうせ見たってあの口うるさいオババ(主任)だろっ!と思い込んでいた。

「ヒロ君!この雑誌すごいね~椅子の上に山積みの崩れると危険だからベット下に整理しておくからね」いつもと違う若い女性の声。

ん?と思って声のするその方向に視線を移すとズキューン!!

天使がそこにいた!!

【つづく】

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